2022年(令和4)年末にあたって(コロナ禍3年目に思うこと)

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アマゾンKindle版『サリドマイド事件(第7版)』(最新:2023/02/25刷)
(2023年)3月5日17:00(日)~3月10日16:59(金)

はじめに

団塊の世代一期生の私は、年が明ければすぐに後期高齢者の仲間入りをします。最近の私は、週に1.5日ほど、広島市内の保険薬局で薬剤師として働いています。もちろん、管理薬剤師さんやスタッフの皆さま方に支えられての話です。

さて、今年も気付けば、はや師走、コロナ禍の3年目が間もなく終わろうとしています。しかしながら、事態終息の見通しが立たない中で、日本の医療界はと言えば、各種ワクチン接種をめぐる見解の相違などを含めて、ますます混沌としてきました。

ただ一つ確実に言えることは、一般市民の一人ひとりが、自分自身の頭で考え抜くことを求められる時代になったということでしょう。そしてそれは、日本の国力(正しく考える力)の向上につながる問題でもあると考えます。

以下にて、私なりに今年1年の重大ニュースをまとめてみました。これらの事柄が、前向きな情報交換の材料として、お役立ていただけるならば幸いです。

【重要】本文は全て私個人の見解であり、私が所属するいかなる組織の見解を代表するものではありません

国立国会図書館に納本:『サリドマイド事件~世界最大の薬害 日本の場合はどうだったのか~』

自著『サリドマイド事件』の更なる改訂版を、年内には広島県立図書館にも1冊寄贈する予定でした。ところが、日本のサリドマイド裁判(東京地裁)で証拠書類として挙げられている資料が、今日現在、存在しないかもしれないという驚愕の事態に遭遇しています。広島県立図書館から国立国会図書館へ、更なる調査を依頼したところです。

後日注)
法政大学 大原社会問題研究所 環境アーカイブズでもお世話になりました。
(川俣修壽・サリドマイド事件関係資料)

Kindle版(電子書籍)とPOD版(紙の書籍)の両方を作成

『サリドマイド事件』(POD版:紙の書籍、2021年11月15日刊)を多少手直しして、遅ればせながら今年(2022年)の春、国立国会図書館に納本しました。その後も、情報のクロスチェックを繰り返すことによって、より信頼性の高い書籍となるよう日々努力しています。

なお、アマゾンで配布のものには、Kindle版(電子書籍)とPOD版(紙の書籍)の両方があり、それぞれ表紙カバーが異なります(内容は全く同じです)。⇒ amzn.to/3xs7pzn

参考)サリドマイド事件とは、催眠・鎮静剤サリドマイド(化合物名:N-フタリル・グルタミン酸イミド)を妊娠初期の女性が服用することによって、胎児(正確には胎芽期)に四肢短縮などの障害(奇形)を生じた世界的な薬害事件(1950年代後半から1960年代初頭にかけて)のことを言います。

後日注)
上記「N-フタリル・グルタミン酸イミド:N-Phthalyl Glutamic Acid Imide(K17)」に対して、thalidomideの語源となった表記法では、「alpha-N-phthalimido-glutarimide(N-フタル・グルタミン酸イミド)」となります。

厚生労働省:HPVワクチンの定期接種について積極的な勧奨を再開

日本でのHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)は、2009年12月に接種が開始され、2013年4月1日からは定期接種となりました。ところが、その直前の2013年3月には、「2価HPVワクチンを接種した女子中学生に対し、杉並区が補償を決めた」という内容のスクープ記事が出ました。

世界で日本だけ積極的な勧奨を中断していた

厚生労働省は、HPVワクチンを定期接種とした直後の2013年6月、体調不良を訴える患者が増大したとして、積極的な勧奨をしない方針に変更しました。

それから約9年後、同省は今年(2022年)4月、HPVワクチン定期接種の積極的な勧奨を再開しました。また、日本産科婦人科学会(公益社団法人)では、WHO(世界保健機関)作成のスライドも紹介(日本語翻訳版)しながら、Web上で、資料「子宮頸がんとHPVワクチンに関する最新の知識と正しい理解のために」を公開しています。

薬被連(全国薬害被害者団体連絡協議会):HPVワクチンの積極的な勧奨に反対

HPVワクチンの副反応に関して、ある大学研究グループは、HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)という概念を提唱しています。しかし、その副反応とされる症状とは一体どのようなものなのでしょうか。

HPVワクチンの副反応とは何か

薬被連は、HPVワクチンの積極的な勧奨に反対しています。その理由は、HPVワクチン薬害訴訟全国原告団に属する被害者の訴えを、HPVワクチンの副反応と捉えているからです。

しかしながら、被害者がHPVワクチンの副反応として訴えている諸症状が、本当にHPVワクチンと因果関係のあるものかどうかについて、森内浩幸・長崎大学医学部教授は、次のような見解を示しています。

採血をしても画像検査をしても、特に異常は見つからないけれど、頭痛やだるさ、集中力の低下や物忘れ、症状が強ければ全身の痛みや歩行障害まで出現するこのような機能性身体症状は、元から思春期の子どもにあった問題」です。

ここでは、HPVワクチンは関係ないとする森内浩幸教授のお考えを、木下喬弘医師がまとめたものから引用しました。(木下喬弘. みんなで知ろう! 新型コロナワクチンとHPVワクチンの大切な話 (p.95). ワニブックス. Kindle 版)

森内浩幸教授:HPVワクチンで救える命を見殺しにしていいのか?

名古屋スタディ(鈴木貞夫・名古屋市立大学教授:2015年12月14日発表)では、「日本で問題になった24の症状すべてにおいて、ワクチン接種者も非接種者も同じ頻度で起こっている」ことをすでに証明していました。つまり、どの症状もワクチンとの因果関係は認められなかったのです。

大手新聞社の非科学的な報道は許せない

森内浩幸(もりうち ひろゆき)長崎大学小児科学教室主任教授(感染症学)は、次のような記事を書いています。(公開日:2021年5月20日)

HPVワクチンで救える命を見殺しにしていいのか?大手新聞社が握りつぶした幻の記事を再掲」BuzzFeed Japan Medicalで再掲載
https://www.buzzfeed.com/jp/hiroyukimoriuchi/hpvv-moriuchi-yomi
(以下、「」内すべて引用)

森内教授は、2021年当時の現況について、次のようにまとめています。

HPVワクチンは、「日本において(世界中で日本だけにおいて)、積極的な勧奨中止という判断の下、せっかく定期接種に加えられたというのに接種率はほぼゼロになってしまいました」。
「それは国内で338万人の少女に接種した後、体のいろんな部位の痛みだとか、体が勝手に動く不随意運動だとか気分不良だとか様々な訴えを持つようになったことが問題視されたからです」。

なお、この森内教授の文章の副題は、「大手新聞社が握りつぶした幻の記事を再掲」となっています。日本におけるHPVワクチンをめぐる混乱を招いた責任の一端が、大手新聞社(複数)の非科学的な報道姿勢にあったことは間違いありません。

WHOは、副反応ではなくストレス反応としている

さて、森内教授は、続けてWHOが提唱する概念について紹介しています。

「世界保健機関(WHO)は2019年12月に予防接種に関連する有害事象の一つとして、「ワクチン接種ストレス関連反応Immunization Stress Related Responses (ISRR)」という概念を提唱しています。ワクチンそのものによって起こるものではなく、予防接種への不安に関連して起こるストレス反応で、(一部略)不安感の強い若くて痩せた女性に起こりやすく、SNSを含めた周囲が不安を掻き立てることによって助長されるとしています。HPVワクチン接種後の訴えの多くは、この概念で説明できると考えられています」。

ワクチンに関係ない症状であろうともフォローすべき

さらに、森内教授は、症状に苦しんでいる子どもたちに対して、ワクチンは関係ないと突き放すのではなく、次のようにきちんとフォローすべきとしています。

「誤解してほしくないのは、これらの症状で苦しんでいる子どもたちがワクチンのせいであろうとなかろうと、しっかりと向き合い、その苦しみを除くために努力すべきだということです」。(以上、「」内すべて引用)

文部科学省:薬被連に寄り添い、HPVワクチンの積極的な勧奨に反対

薬被連は、これまでも文部科学省と連携しつつ、薬害教育に関して大きな役割を果たしてきました。日本の育薬・薬育のために、厚生労働省(医療全般)だけではなく、文部科学省(学校教育)が関わりながら、各大学の医療系学部で「薬害被害者の声を聞く授業を行うこと」などは、非常に意義深いことだと言えます。

薬被連から文部科学省に対してHPVワクチン反対表明

薬被連から文部科学省に対して、次のような要望が出されていました。

宛)文部科学大臣 萩生田光一様(2020年8月24日発)
発)全国薬害被害者団体連絡協議会、代表世話人 花井十伍
注)花井十伍さんは、自身も薬害エイズの被害者です。

要望書「文部科学省は、絶対に、学校現場において、HPVワクチンを推奨したり接種を勧めるパンフレット等を配布したりなどの広報をしないでください」。(一部のみ抜粋)

文部科学省は薬被連のHPVワクチン反対表明を受け入れた

文部科学省からは、それを受けて、次のような通知が出されていました。

2高医教第15号、令和2年9月9日
宛)医学部、歯学部、薬学部、看護学部等を置く各国公私立大学長 殿
発)文部科学省高等教育局医学教育課長、丸山浩(公印省略)

医学部、歯学部、薬学部、看護学部等における薬害問題に対する取組状況調査結果について(通知)

薬被連の要望書(別添1となっている)などを添付した上で、以下のように書かれていました。
薬害被害者の声を直接聞く授業や教員研修等の実施に当たっては全国薬害被害者団体連絡協議会に御協力をいただけるので、その場合は別添3に記載の担当窓口まで御連絡ください」。(一部のみ抜粋)

薬被連の”薬害教育”は、今後も一般市民のためになるのか

今回の件は、もちろん2020年(令和2)のことですから、HPVワクチンの定期接種について積極的な勧奨を再開することが決定(2021年10月)する前の話しです。

しかしながら、厚生労働省がHPVワクチンの積極的勧奨を再開しようとする中で、文部科学省はそれに反対する薬被連の要望を聞き入れた形になりました。しかも、HPVワクチンの積極的勧奨に反対している薬被連から、薬害教育の講師などを紹介してもらうことができるとまで言っているのです。

これは、紛れもなく省庁間のねじれ現象の極みと言えます。文部科学省は、薬被連と共に、今後どのような薬害教育を推し進めていこうとしているのでしょうか。
(この件は、本年2022年10月末ころから、SNSで話題に上がってきています)

「いしずえ」:公益財団法人としての役割は終わった

私は、薬害防止に向けて、被害者の方々の思いは重く受け止めるべきである、と考えています。だからこそ、その公式Webに曖昧な文章を掲載することは、決して許されることではないとも考えています。

「いしずえ」の態度は不誠実である

公益財団法人「いしずえ」(サリドマイド福祉センター)は、薬被連(全国薬害被害者団体連絡協議会)の主要な構成メンバーの一つです。その公式Webの中に、「サリドマイド事件-事件の概要/被害の実態」のページがあります。

私は、このページに幾つもの疑問点を見つけ、「いしずえ」の「お問合わせ」フォームで連絡をしたことがあります。2020年春ごろで、ちょうど安倍晋三元首相が、催奇形性のあるアビガン錠(抗インフルエンザウイルス剤)を、新型コロナウイルス感染症の治療薬として、無理やり承認させようと前のめり状態になっていた時期のことです。

私が指摘した中で、一箇所だけは事務局の判断で直ちに手直しされました。

しかしその後は、「修正は必須、全面的な書き直しも検討(要約)」と、事務局から回答があったのみです。2年目の昨年夏(2021年)、再度確認したところ、返信メールすらありませんでした。3年目の今年春(2022年)、自著「サリドマイド事件」(紙の書籍)を一冊進呈しました。事務局から、「理事長の佐藤が読まさせていただきます(ママ)」とメールを頂きました。しかしながら、それでも公式Webの修正は行われませんでした。

佐藤嗣道理事長の態度は不誠実である

「いしずえ」の佐藤嗣道理事長は、自身もサリドマイド被害者です。薬学部を卒業後、博士号を取得(医学博士)して、現在は大学で准教授(薬剤疫学)を務めています。また、厚生労働省の委員会の委員(医薬品等行政評価・監視委員会委員)でもあります。

このような立場の理事長が、自らが長を務める組織の公式Webすらきちんと整備できないとは、とても信じられません。「いしずえ」は、公益財団法人として「薬害防止等に関する事業」を遂行するにはふさわしくない団体になったようです。

参考)「いしずえ」は、公式Webのトップページで次のように述べています。「いしずえはサリドマイド被害者の健康管理と福祉の増進、被害者の交流、薬害防止等に関する事業に取り組んでいます」。(2022/12/01再確認)

塩野義製薬(株):新型コロナウイルス感染症治療薬「ゾコーバ」(内服薬)緊急承認(2022/11/22)

医療用医薬品の国産化は、国益に直接つながる重要案件であると考えます。

審議の過程および有効性のいずれも納得できない

私は、数年前から塩野義製薬OB会に所属しています。ゾコーバに関しては、国の制度の下で承認された以上は、「国がきちんと定めた承認基準をしっかりとクリアーできているはず」としか言いようがありません。しかしながら、薬剤師の職能からすれば、臨機応変に対応する場面が多く出てきそうです

第8波はすでに始まっています。ゾコーバをいざというとき服用すべきかどうかについては、かかりつけの医師・薬剤師と相談の上、事前に学習しておくことをお勧めいたします。

あきまさ@日本語を大切にする薬剤師:@akimasa21(Twitter)

SNSは玉石混交だが光るものも多い魅力的な世界です。

大手マスメディアよりもSNSを

今年(2022年)春からTwitterを始めて、少しばかりやってみました。⇒@akimasa21(Twitter)

本当は、2009年11月にアカウントを取得して放置していたものです。律儀に古いアカウントを引っ張り出してきたものだから、経過年数は長いくせに中味はないし、積極的にフォローもしないし、評価は全くありません。最初は、最低でも1日1回はつぶやくことにしていましたが、最近ではそれも滞っています。

それでも、Twitterを始めてよかったと思います。この文章の上の方にも、SNSという単語が幾つか出ています。何と言っても、今は間違いなくSNSの時代です。情報の吟味さえできれば、新聞・テレビなどの大手マスメディアよりも、新鮮で奥が深いことは間違いありません

おわりに

以上、最後までお読みいただきありがとうございます。
これにて、年末のご挨拶に代えさせていただきます。
皆様方のますますのご健勝をお祈りいたします。

山本明正(やまもと あきまさ)

1970年3月(昭和45)徳島大学薬学部卒(薬剤師)
1970年4月(昭和45)塩野義製薬株式会社入社
2012年1月(平成24)定年後再雇用満期4年で退職
2012年2月(平成24)保険薬局薬剤師(フルタイム)
2024年12月(令和6)現在、保険薬局薬剤師(パートタイム)

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