AKIMASA.NET >> 細見谷渓畔林と十方山林道(出版計画)

 

<渓畔林部分>


渓畔林部分(計画延長4.6km)
・原則として既設林道の拡幅はしない(車道幅員3.0m)
・原則として大径木は伐採しない

舗装するだけで林道脇の植生は破壊される:

二軒小屋から水越峠、さらにはケンノジ谷(9号橋、8号橋そして7号橋)と越えてしばらく行くと、スギがポツポツと生えている地点があり、いよいよ渓畔林部分に入っていく(標高940m前後)。

林道両側から高木層の枝葉が覆いかぶさり、林道上で日の光を浴びることはほとんどない。そして、未舗装林道沿いの草地や林縁には数多くの植物が生育しており、渓畔林の構成要素として非常に大切な場所となっている。1953年(昭和28年)完成の十方山林道は、今ではほぼ完全に自然の一部として溶け込んでいるのだ。

そこで、”渓畔林部分(車道幅員3m)は舗装のみで拡幅せず”となっている点について、もう少し正確に理解しておく必要が生じる。すなわち、十方山林道(未舗装)の道幅は、夏季には両端に繁った植物で3m以下となる。つまり、3m幅の舗装をするだけで、道端両端の大切な植生が破壊されてしまうことは確実だ。

同様にして、水生昆虫、陸生貝類、両生類・は虫類など、林道脇の湿地で暮らす生物たちにとっても大打撃となる。

ところで、水生昆虫といえば、「細見谷と十方山林道」(2006年)編集時のことを思い出す。編集も大詰めを迎えた2006年4月になって、細見谷におけるカワゲラ目とトビケラ目のデータを竹門康弘助教授(京都大学防災研究所水資源環境研究センター)からご提供いただいた。このような生の調査データを扱わせていただいていいのだろうかと感激しながら、Excel(表計算ソフト)を使って編集用にまとめていったのだった。

林道下の伏流水は命水だ:

十方山林道上には、晴れの日でもいつも水溜りができている。細見谷川(渓畔林)に向けて、両側の山からたえず水が流れ落ちているためだ。梅雨時ともなれば、雨上がりの日でも林道上を川のように勢いよく水が流れている。夏になると、林道上のあちこちの水溜りで、十数頭のミヤマカラスアゲハがそろって吸水活動をしているのをみることができる。全国的にも他ではまず見ることのできない光景だろう。

山側から流れ落ちる水は、林道下を伏流水として通り抜けている。あるいは、林道上を流れる水は、それらの水みちを断ち切られたものが、あふれ出しているのかもしれない。いずれにせよ、「十方山林道の水越峠の下流4km以内の渓畔林において、その渓畔林沿いの林道下には山地斜面からの伏流水がいたるところで流入し、林道下50cm以浅を通過して渓畔林に豊かな伏流水を供給していることが判明」(「細見谷と十方山林道」2002年、中根・田上P.031)している。

十方山林道の舗装化工事では、大がかりな地盤の掘削はしない、ことになっているという。しかし、それでも35〜40cm程度は掘り下げて路盤作りをしなければいけないようだ。そうすると、地下の水みちを完全に遮断してしまう可能性がでてくる。

林道の地盤支持力は極めて弱い:

今年(2006年)の十方山林道は荒れるにまかされていた。意識的に手を入れず放置しているとさえ思えるほどであった。記録的な豪雪後の雪解け水によって、林道表面が洗い流され、小石や小岩のゴロゴロした歩きにくい道になってしまった。つまり、十方山林道は、そうした小石や小岩でできたスカスカの構造をしており、その隙間をぬって伏流水が流れているということだろう。

十方山林道の「路床支持力(CBR)はおおむね2」ということが、第5回検討委員会で話題にのぼっていたようだ。路床支持力とは、地盤の強さのことで、最も軟弱な0から非常に強固な12までの段階で表わすという。十方山林道の2は、非常に脆弱な地盤ということを意味している。そうした場所に道路を作るには、まず第一に、しっかりとした路盤作りから始めなければならない。

それにもかかわらず、「機構の説明では、透水性を確保するために、大がかりな地盤の掘削はせず、25センチの下部路盤の上に10センチの厚さに砕石を敷き、その上に5センチほどの透水性舗装を施すだけ」(「細見谷に大規模林道はいらない」2006年8月10日付け)だという。

このような路盤の上に作られる透水性舗装道路の耐久性は確保できるのであろうか。さらに、透水性舗装道路が車道に適用された例はあるのだろうか。車が頻繁に通ってもだいじょうぶなのだろうか。多孔質の構造をした道路は、繰り返される高速洗浄や冬場の凍結にどこまで耐えられるのだろうか。このように、透水性舗装化後の耐久性については、あまりにも多くの疑問が残っている。

大規模林道は、完成後には地元の廿日市市に移管されることになる。透水性舗装道路の維持管理費はどのくらいの額になるのであろうか。その他、もろもろの経費・手段等も含めて、廿日市市当局の説明には「環境保全措置」に対する透明性が求められている。

待避所設置は林道拡幅と同じことだ:

何度も繰り返すが、”渓畔林部分(車道幅員3m)は舗装のみで拡幅せず”となっている。当然ながら、これでは対向車同士の離合はできない。そこで、林道上の約140mごとに待避所を設けることになっている。これでは、林道を拡幅するのと同じことだ。大切な道路両端の植生や小動物の棲みかは完全に破壊されてしまう。

また、待避所を設けるために高木層が切り倒されるならば、日の光が直接地面にまで達するようになるだろう。渓畔林内の温度上昇に伴って水温が上昇するなど、影響はあらゆる面に及ぶことだろう。加えて、排気ガスが谷底に滞留するとなれば、渓畔林の維持は極めて困難となるはずだ。

十方山林道の大規模林道化工事は、それでもやらなければならない工事なのだろうか。戸河内・吉和区間の費用対効果は<1.02>とされている。そして、その数字は区間全体を平均したものだ。

そこで、もしも完成部分の方が未完成部分(十方山林道部分)よりも便益が高いとするならば、十方山林道部分の便益は、区間平均を割り込んでマイナスになる可能性があることを意味している(くわしくは、本文「費用対効果、1.02」参照)。財政逼迫の折から、費用対効果については厳しい評価を行ってほしいものだ。

下山橋:

十方山林道をさらに下ると、下山橋に至る。そこから、下山林道が南に向って十方山南西尾根に上がっている(二万五千分1地形図、黒実線)。この下山林道は、十方山南西尾根を越えたところにある十方山雨量観測局のすぐ先で、二つに分岐する。一つは、南西尾根の東南面を北東に向い、瀬戸谷南尾根近くに至る(地形図よりもさらに延びている)。もう一つは、同じく南西尾根東南面を南西に向い、黒ダキ山手前に至る(地形図には全く記載なし)。

ワサビ田:

十方山林道上には、ワサビ田がいくつかある。しかし、いずれもここ数年のうちに再開されたものばかりで、まだ出荷量はほとんどない状態のようだ。林道上の標高824m地点の東側対岸にあるものは、オバコ谷の清流を利用したものだ。さらに、もう二ヶ所、こちらはいずれも林道右岸上部にある。オバコ谷のすぐ上流にある長者原下ノ谷(林道上の標高830m台)と、カネヤン原(標高754m表示)の少し上流にあるノブスマ谷(林道上の標高770m台)のものだ。

これらワサビ田の生育状況を確認しつつ、金井塚務は「ワサビ産業の育成は、大規模林道の工事によってではなく、スギ人工林を落葉樹との混交林に戻しつつ、保水力を回復させ、生物の多様性を取り戻すことでしかなしえない」(「細見谷に大規模林道はいらない」2006年7月4日付け)と結論付けている。

カネヤン原:

6号橋(トリゴエ谷、標高770m前後)を過ぎて、カネヤン原(林道上の標高754m表示)までが、一応渓畔林の範囲とされている。そして、そこには営林署跡があり、外来種のオオハンゴンソウがあたり一面にはびこっている。これだけで、かつて人が住んでいたことがわかろうというものだ。*6号橋:林道上の標高786mを西に回りこんだ地点、京ツカ山1129.7m取り付き

カネヤン原は、新設道路の取り付き予定場所となっている。ところが、そこには落葉広葉樹の大木がたくさんある。そして、動物たちの憩いの場となっていることが、最近の調査で分かってきた。動植物にとって非常に重要な場所なのだ。(本文「七曲(新設部分)」参照)


細見谷に大規模林道はいらない、2006年7月6日(木)、2006年8月10日(木)
http://hosomidani.no-blog.jp/jumintohyo/


AKIMASA.NET

日本の薬害・公害 薬害防止のために薬剤師のやるべきことは
団塊の世代一代記 日本のベビーブーマーって結局何なんだろう
日本百名山Webの旅 Web上で百名山完登に挑戦してみよう
中国地方の山100選(私の踏み跡) 見渡せばいつも身近に山がある
細見谷渓畔林と十方山林道 大規模林道化はほんとうに必要なのか

site map 自己紹介、著作権・リンク等、連絡先メールアドレスを含む
What's New  主なサイト内更新情報あるいは近況など

AKIMASA.NET
http://www.akimasa21.net/
− 21世紀は環境の世紀 −