AKIMASA.NET >> 細見谷渓畔林と十方山林道(出版計画)

 

<細見谷渓谷>


細見谷を流れる細見谷川は、”祠”(山の神)附近で左折して細見谷渓谷に流れ込み、そこを過ぎてさらに左折、吉和川に合流して立岩貯水池に至る。そしてそこから戸河内町に入り、太田川本流となって瀬戸内海(広島市)に注ぐ。”祠”附近までの細見谷上流部は、北東−南西系の断層の発達した谷であり、下流部の細見谷渓谷は、それと交差する西北西-東南東系の断層によって成り立っている。

細見谷渓谷は、「断層線に直交する方向に貫入曲流したV字状の渓谷で、両岸から本流へ流入する小谷の落ち口付近には必ずと言ってよいほど滝があり、侵食の激しいことを物語っている。また本流の両岸は岩壁となっており、二万五千分の一図の毛虫記号の多さにも驚かされる」(「西中国山地」P.110)。その結果、細見谷渓谷は、「日本百名谷」白山書房(1983年)に選ばれるほど変化に富んだ美しい渓谷となっている。

下山林道途中から、細見谷渓谷に下りる道がいくつかあるようだ(「下山林道」の項参照)。私は、そのうちの一つで、ホトケ谷落ち口(イカダ滝とV字滝の中間点)に至るルートを歩いたことがある(参照:「西中国山地」”筏滝周辺”P.113)。

立野から下山林道に入り、黒ダキ山取り付きを通り過ぎてなおも進み、林道最西端(標高740m前後)に至る。林道が大きく右に曲がって56度(磁北から)を向く少し手前である。そこからほぼ真西に向って下る。

”大岩”の左(南)側を通り抜けて、その下の少し小さい岩を過ぎると、小岩が散乱している場所に至る。ちょっとした岩海状態の所を通ってクロダキ谷に下りる。流れは緩やかで川岸を通ることが出来る。左手下流に向けて少し下ると小滝がある。簡単には進めそうにない。

対岸に渡り、見えている尾根の突端を駆け上がる。ほんの小さな尾根上の部分を通り越し、黒ダキ山1084.7mから南に落ちる尾根に上がる(標高680m前後)。そこから、尾根の南西斜面をトラバースして、足元の踏み跡を踏み外さないよう慎重に進む。地形図ではほとんど表現されない小さな尾根状部分を二つくらい越えて、ホトケ谷手前のササ原急斜面に至る。前方の高みからのぞきこむと、ホトケ谷を見下ろすことができる。

手前の斜面を一杯に使ってジグザグに下る。踏み跡もテープもあるようだが、はっきりとはしない。大体の見当をつけて強引に下って、ホトケ谷下流部に下り立つ。細見谷川本流が左手すぐに見えている。岩場を滑らないよう慎重に下って、細見谷川本流に至る。

細見谷川本流の岩の上に立つ。左手(下流)の筏滝も、右手(上流)のV字滝も見えない。ここからどのように進むのだろうか。沢の中に入るのか、それとも巻き道があるのか。先達の参考図を見てもよく分からない。流れる水の量は多く、周りは切り立った崖だ。その中にただ一人。恐怖を感じさせる圧倒的な空間だ。結局はその場から一歩も動くことができず引き返した。


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