AKIMASA.NET >> 細見谷渓畔林と十方山林道(出版計画)
<細見谷渓畔林をラムサール条約登録地に> 細見谷渓畔林は湿地帯なのだ: 細見谷渓畔林は湿地帯だと、中根周歩(広島大学教授、森林生態学)はいう。どういう意味なのだろうか。講演:中根周歩「自然を本当に活かした地域振興を−十方山林道の未来への提言」(月間情報誌「環・太田川」2002年1月号収載)を抜粋した「細見谷と十方山林道」(2002年)P.056-059を読んでみよう。 その中の、「森林生態学からみた渓畔林の重要性−渓畔は水循環の心臓部である」と題するコラムでは、「渓畔というのは、出てきた水が河川に流れ込む、ちょうど境界(エコトーン)なんですね。表層を流れる水だけでなく、地下を通る水(基底流)も、渓畔では湧き水としてでてきます。河川が底になって、岩盤に近いところですからどうしても水が湧いてくる。渓畔は上(山体)から来る水と河川水のバランスで保たれた湿地帯として存在しています。十方山林道の渓畔林は傾斜が非常に緩いので、水溜りや湿地がたくさんできています」として、「渓畔の水溜りやなだらかな渓流は、そこに棲んでいる魚類にとってとても大切な場所」であることや、「(渓畔が)森林−河川の水循環において、干潟と同じような役目を担って」いること等を述べている。 *エコトーン:移行帯で、斜面から渓流に至る生態系 ラムサール条約とは: ラムサール条約の正式名称(和訳)は、「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」である。1971年にラムサール(イランの首都テヘランの北、カスピ海沿岸)という小さな町で採択された条約で、特定の生態系を扱う地球規模の環境条約としては唯一のものである。 ラムサール条約の根本理念は、「湿地(ウェットランド、wet land)における生物多様性の保全」とその「賢明な利用(ワイズユース、wise use)」にある。条約では”生態系の自然特性を変化させない方法で、人間のために湿地を持続的に利用すること”を求めている。 日本は1980年に条約締約国となっており、その際に登録された釧路湿原(北海道)を始め、国内では2002年11月現在13ヶ所の地域が登録されていた(世界の締約国133ヶ国、登録地1229ヶ所)。そして、2005年には新たに20湿地が条約湿地として登録された。 ラムサール条約の対象拡大: 条約湿地がいっきょに増加した背景について、外務省ホームページ(ラムサール条約の項)は次のように述べている。 「2005年までに条約湿地数を少なくとも2,000か所にするという第7回締約国会議(1999年)決議を受けて、環境省が中心となり、我が国の重要な湿地のリストである「日本の重要湿地500」の中から専門家による検討を経て候補地を選定し、自治体等との調整を行った結果、2005年10月に新たに20湿地が条約湿地として指定され、同年11月8日にその全てが同条約の登録簿に掲載された。 これにより、我が国の条約湿地数は合計で33か所となった。また、我が国は、従来は水鳥の生息地を主な対象として登録を行ってきたが、今回の登録に際してはわが国を代表する多様なタイプの湿地を登録するとの方針のもと、マングローブ林、サンゴ礁、地下水系、さらには水田を含む沼地、アカウミガメの産卵地などこれまであまり登録されてこなかった形態の湿地を条約湿地に指定した。このような我が国の取組に対する条約事務局及び他の締約国からの評価は高い」 ラムサール条約の理念と概念の拡大: 「細見谷をラムサール条約登録地に」(連続学習会・第1回)2003年03月01日(土)で、私は講師の金井塚務(当時・宮島自然史研究会、現・広島フィールドミュージアム)会長、花輪伸一氏(WWFジャパン)のお話を聞き、また後日主催者を通じて補講を受けながら、次のような文章をまとめていた。 「今までの登録地(湿地)をみると、湿原、干潟、あるいは湖沼などに限られており、細見谷のような渓畔林(水辺林)の登録は未だ世界的に前例がない。細見谷の条約登録は、「湿地の保全と賢い利用」について、新たな具体的事例を世界に先駆けて示すものになるだろう。それは細見谷にとっての利益であるばかりでなく、条約の理念と概念の拡大、すなわちラムサール条約そのものの価値を高めるという大きなメリットを持っており、非常に意義のあること、やりがいのあること、面白いことであるといえよう」 細見谷渓畔林をラムサール条約登録地に: 残念ながら、細見谷渓畔林は条約湿地としては未だに認められていない。「日本の重要湿地500」にも入っていない。当日の花輪伸一氏のお話を私の責任においてまとめると、ラムサール条約登録に向けて条件が整うためには、以下のようなステップを踏む必要があるという。 「条約登録のメリット、ディメリットについて、利用者のみならず地元地域住民、利害関係者にとって納得のいく説明をすること。その基礎資料として学術調査による裏付けが必要となる。それらを広報することによって地域住民の合意を得ることが最も大切である。そこから行政へ国へとはねあげることによって、国内法による湿地保全の担保が得られたとき初めて登録が可能となる」 細見谷渓畔林は湿地帯だということは、十方山林道を歩いてみればすぐ実感できる。林道沿いの平坦部には湿地帯が広がっている。そして、林道上には雨上がりでなくても常に水溜りができている。 たしかに、細見谷渓畔林の規模は大きくはない(幅100〜200m、長さ5km前後)。しかし、水と生物をテーマにした自然環境として、将来に残すべき第一級の景観であることは間違いない。私は、細見谷に通い始めた頃聞いたラムサール条約という言葉の響きを忘れることはできない。そうした個人的な感情も含めて、細見谷渓畔林のような登録地があってもよいのではないかと考えている。 外務省>外交政策>地球環境>ラムサール条約
日本の薬害・公害 薬害防止のために薬剤師のやるべきことは AKIMASA.NET
|