AKIMASA.NET >> 細見谷渓畔林と十方山林道(細見谷林道)

<十方山林道問題とは>

<はじめに>

2006/08/18
細見谷林道(渓畔林部分と道路新設部分)着工是非の結論は、
来年度以降に持ち越し(期中評価委員会)

細見谷林道工事の是非を問う住民投票条例制定について審議するための臨時市議会(広島県廿日市市)が8月18日(金)に開会され、廿日市市議会は細見谷林道工事の是非を問う住民投票条例案を7対24で否決した。

一方、2006年8月19日付けの中国新聞によると、廿日市市吉和の細見谷を通る幹線林道の整備計画(13.2`)で、事業再評価を行う林野庁の「期中評価委員会」は18日、都内で四回目の会合を開いた。渓畔林部分(4.6`)と道路を新設する部分(1.1`)について、さらなる環境調査を求め「あらためて取り扱いを審議する」との意見をまとめ、着工是非の結論を来年度以降に持ち越した。

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西中国山地の十方山(じっぽうさん)と恐羅漢山〜五里山で出来る谷間を、瀬戸内海(広島市)に注ぐ太田川源流の一つである細見谷川が流れている。両岸には、ブナ、イヌブナ、サワグルミ、トチノキ、ミズナラ、オヒョウ、ミズメ、ナツツバキ、ミズキ、コハウチワカエデ、ハリギリ、イタヤカエデなどで構成される自然豊かな渓畔林(水辺林)が発達しており、これを細見谷渓畔林という。なおこの渓畔林部分が属するのは、広島県廿日市市(はつかいち〜し)吉和地区(旧吉和村)である。

十方山林道は、細見谷渓畔林を貫いて(細見谷川に沿って)走る林道で、既に50年以上も前(昭和28年、1953年)に完成している。未舗装で幅員3〜4mながら4トントラック走行可能であり、細見谷川両岸の植林事業に大きく貢献するものであった。この未舗装林道を拡幅舗装化(一部新設、一部舗装化のみ)する大規模林道化工事が始まろうとしている。そこに何の意味があるのか。問題意識の高まりの中で、この林道は細見谷林道とも呼ばれるようになっている。


十方山俯瞰

”安蔵寺山(あぞうじやま)”上空約15,000mからの鳥瞰図(真北から71度方向)

この地図の作成に当たっては、国土地理院長の承認を得て、同院発行の数値地図
25000(地図画像)及び数値地図50mメッシュ(標高)を使用した。
(承認番号 平14総使、第485号)。なお、方位は真北から。

2006/01/07、新規文章追加
2004/07/31、最新

細見谷渓畔林の保全に向けて

林道工事の影響を検討するため、事業主体の緑資源機構は、2004年6月4日、動植物研究者5名による「環境保全調査検討委員会」を発足させた。林道工事の実施に伴う影響の予測・評価及び保全措置を、専門的・学術的な見地から」検討するためである。

そして遂に、2005年11月28日(月)第9回検討委員会は、緑資源機構の報告書(案)を承認した。これによって、十方山林道(細見谷林道)の拡幅舗装化工事着手に事実上のゴーサインが出たことになる。

しかし、これは全員一致による結審ではなかった。座長を含む委員5名の内2名が意見書を添付している。細見谷の自然を正しく評価するためには、まだまだ調査データが不足している、というのだ。2005年12月18日(日)中国新聞社説でも、この結論に対して厳しい批評を加えている。 まだ最終結論を出すべき段階ではなかったと言わざるを得ない。

これに対して、市民団体では新たな署名活動を開始した。渓畔林を含む細見谷地域全域を”西中国山地国定公園 特別保護地区”へ指定することを求めて!!(最終集約日、2006年03月31日)。特別保護地区で林道工事はできない。

さらに、環境保護団体・広島フィールドミュージアム(金井塚務会長)による巡回写真展が2006年01月09日からスタートする。ツキノワグマなど細見谷渓畔林の動植物を紹介するためである。”林道計画に揺れる生き物たちの今を知ってほしい”から(中国新聞2006年01月07日付)

十方山林道(細見谷林道)は、約50年前(昭和28年、1953年)に既に完成しており、<未舗装>ながら幅員3〜4mで、4トントラックが通行可能な林道である。その林道を大規模林道化(幅員5mに拡幅舗装化)する必要があるのだろうか。まずは既設のこの十方山林道 (細見谷林道)について確認しておこう。

十方山林道(細見谷林道)の基点は二軒小屋であり、林道はそこから概ね<南西>方向に走っている。まず二軒小屋から水越峠をめざして登り、峠を越えると、やがて細見谷川(源流部)と接するようになる。そしてそのまま細見谷川に沿って、十方山と恐羅漢山〜五里山で出来る谷間を、”祠”の手前辺りまで<ゆるやかに>下っていく。 この谷間は、広島県内に多く見られる南西方向に走る断層帯の一つである。

十方山林道(細見谷林道)は、”祠”附近で「左折する細見谷川」と別れ、なおも南西方向を目差す。そこから一旦<高度を稼いで>押ヶ峠を越え、国道488号線(中津谷川沿い) 、すなわち上図で”吉和西”とポイントした地点に向けて下っていく。

細見谷川は、太田川<源流>の一つである。水越峠附近に端を発し、”祠”附近まで南西方向にゆったりと流れる。そこで左折して十方山林道と別れた後は、細見谷(細見谷渓谷)の<急流>を経て、さらに左折、立岩貯水池に至る。そこから戸河内町に入り、太田川<本流> となって瀬戸内海(広島市)に注ぐ。

渓畔林と断層帯”、これが この工事の是非をめぐる二つのキーワードといってよいだろう。

細見谷川最上流部、すなわち十方山林道が細見谷川と接する部分には、みごとな渓畔林(水辺林)が存在しており、生物多様性の宝庫(河野昭一・京都大学名誉教授)となっている。 しかしながら、その範囲は谷底から約100〜200m幅、長さ5〜7kmであり、かろうじて残されているといった状態にある。

一方、細見谷川沿いから押ヶ峠附近に至る林道は、いくつもの小さな断層を避けるようにして作られたため曲がりくねっており、通称「七曲」と呼ばれている。この地域全体が著しい「ゆるみ」状態に達しており、全般的に脆弱化(古川耕三・崇徳高校教諭、宮本隆實・広島大学助教授)しているのだ。

緑資源公団による大規模林道事業計画によれば、 十方山林道部分の工事概要は次の通りである。

渓畔林部分では、
・原則として既設林道の拡幅なし(舗装及び排水施設等を整備)
・巨樹、巨木は伐採しない

通称「七曲」部分では、
・舗装道路新設(幅員5m)

その他部分では、
既設林道の拡幅舗装化(幅員5m)

これに対して種々の反論がなされている。すなわち、たとえ渓畔林(水辺林)部分を拡幅しないとしても、舗装化や側溝等の設備を整えることによって、湿地(wet land)としての特性は失われてしまうのではないだろうか。それは、細見谷の生物多様性にとって致命的となりはしないか。

断層地滑り地帯で、崩落を防ぐための強固なよう壁の建設は可能なのだろうか。そして、新道建設予定地点の地盤は大丈夫なのだろうか。膨大な建設費、莫大な修理費の支出といった出口のない悪循環に陥る可能性はないのだろうか。 等々。

コスト&ベネフィットについて、確かな数値に基づく議論をすべき時にきている。大規模林道化によってもたらされる利益と、林道建設および完成後の維持にかかるコストとのバランスを考えることだ。

それらの基礎的な資料を得るために、専門家と市民団体による共同の学術調査が開始されており、その成果は小冊子「細見谷と十方山林道」(2003年1月刊)としてまとめられた。広島県十方山・細見谷(渓畔林−水辺林)の小型サンショウウオや植物あるいは昆虫などの生物および地質に関する調査について報告したものである。

細見谷渓畔林の利用法として、野外博物館(フィールドミュージアム)構想が提案されている(金井塚務・広島フィールドミュージアム会長)。エコツアーの開催によって参加者に自然認識を深めてもらうことができる。そのためのガイド養成など地場産業として雇用の創生をはかることができる。アクセス道路としては今ある林道で十分、など。ラムサール条約における湿地の保全とその賢明な利用(wise use)という概念にも当てはまる。

中根周歩・広島大学教授は、森林生態学の立場から、ツキノワグマなど野生生物の聖域を作ることによって、野生生物との共生モデルとすることを提案している。そのために、現存の人工林(採算性なし)に対しては、強間伐に限定した施業を行い、針広混交林化、さらには自然林への転換を計るべしとしている。

それにしても行政の誠実な対応が求められる。原哲之・農学修士によれば、過去に大規模林道建設に伴う専門家による”特定植物群落調査”が行われている。その際に、広島県は専門家の指摘を無視して、 大規模林道の予定ルートに当たる部分、および水越峠以南の「細見谷の渓谷植生」を除外して特定植物群落を最終的に選定した。日本生態学会第50回大会総会決議文(2003年3月23日)でもこの点が厳しく批判されている。

専門家が集めたデータを中心に据えて、専門家、行政、そして一般市民が一同に会し、納得のゆくまで大規模林道化のメリット・デメリットについてディスカッションする場を作るべきである。(原戸祥次郎・森と水と土を考える会代表)


<細見谷渓畔林>

中国新聞2004年(平成16年)7月25日付
”時想”、京都大学名誉教授・河野昭一さん
細見谷の森、西南本州一の命の宝庫

渓畔林(けいはんりん)とは、河川の流域に沿って発達した水辺林のことをいう。山間部の河川の氾濫原において、サワグルミ、トチノキの巨木が優占する渓畔林が発達することがある。しかし、細見谷渓畔林ほど原生状態が維持されている森は数少ない。そこでは数多くの動植物がくらしている。十方山林道沿線の多様な生き物たちの世界は、西南本州随一といっても過言ではない。

トチノキ、サワグルミに加えて
ブナ、イヌブナ、ミズメ、ハリギリ、ミズナラなど(樹種の豊富さ)
ゴトウヅル、オニツルウメモドキなどつる植物(その太さに驚かされる)
クマタカ、オオタカ、ハチクマなど猛禽類
ハコネサンショウウオ、ヒダサンショウウオなど小型サンショウウオとともに
オオサンショウウオも生息
カワネズミやモモンガなどの哺乳動物(もちろんツキノワグマも)
ヤマシャクヤク、アテツマンサクなど(絶滅危惧種十数種)


<大規模林道事業>

十方山林道の大規模林道化とは、<既設>の十方山林道(二軒小屋〜吉和西間 −未舗装)を、大規模林道の一つである大朝・鹿野<線>、戸河内・吉和<区間>の一部「二軒小屋・吉和西<工事区間>」 として拡幅舗装化(一部新設)しようとするものである。ここで、吉和西とは、十方山林道が国道488号線(中津谷川沿い)と接続する地点をいう。

なお、大規模林道事業は、独立行政法人<緑資源機構>の設立(平成15年、2003年10月1日)に伴い、”緑資源幹線林道事業”と名称を変えている。大朝・鹿野線は<機構幹線林道>の一つで、広島県の北西部に位置する芸北町、戸河内町、吉和村から山口県北部の錦町、美和町、本郷村、鹿野町の各町村(旧町名使用)を通過するものである。

Web作者注:「分かりやすい文章」の作成をめざして、(練習のため)しばしば書き換え作業を行っています。


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